あまりにも名曲多数なhiroと比較するまでもなく、そもそもリリース自体活発じゃなかった他3名。
セールス的にもある時を境に目に見えて低迷期に突入し、試行錯誤の形跡も見えます。
でもだからこそ、あえてリスクを承知で挑んだようなトライアルも散見出来る訳で、
その試みをこそ高く買いつつ、楽曲的にも小粒ながら良作も目白押し、と、トドメの再評価をっ!
★上原多香子編
ダンス兼ヴィジュアル担当と言って差し支えない多香子が、意外にも一番乗りでソロデビューを果たしたのは
皆様も強く記憶にとどめている所でしょう。
当時「RK」名義でプロデューサー•ライターとしても注目され始めていた河村隆一を起用したソロデビュー作は
見事にオリコン首位ゲット!
日本語の発音自体が妙におぼつかない、それでいてピッチも怪しい独自の歌唱法を、
当時「萌え」という言葉こそ無かったものの、的な塩梅に昇華したシンプルで音数少なめなサウンドメイキング
乙女の胸キュン描写に終始した歌詞世界。
それらも相まって、「上原多香子」という素材の扱い方は大方この時点で出来上がり、
それは後々も引きずられつづけるコトになります。
従って、最もSPEED色を感じさせないプロダクション、
彼女独自の世界観という様式美もこの時点ですでに出来上がっていたのでした。
結果的にRKプロデュースラストとなった、本作「SWEET DREAMS」では
シングル3枚、アルバム1枚を通して余りにも定型が凝り固まり過ぎた“上原×河村”の世界で最後に出来るコトをすべて
詰め込んだようなある種の到達感を感じさせています。
初期のイメージをちょっとばかし「オトナのお姉さん」路線にシフトしたようなそれでいて
無機質な世界観、抑えめながら作り込まれたアレンジも含め1個の世界として、非常に秀逸なプロダクション!
またこのシングルには、他に「lonely girl」「クラスメイト」という2曲のカップリングが収められています。
こちらもタイトル曲に負けず劣らずの名作揃い!正直ある時期までA面より好きなくらいでした。
ウィスパーを多用した点も含め、多香子のボーカルのクセを良い方向に転化させているでしょう。
それでいて歌詞の甘酸っぱいニュアンスにもしっくりくる、妙に生々しく艶っぽい印象を受けるのも、sexy。
一方「クラスメイト」は、彼女の「かわいい」声の表情を活かし
想い出を振り返り、懐古し、ちょっと切なくなっちゃうという、センチメンタルな空気感。
3曲全てに置いて、彼女の特異なボーカルをこそ最大限に活かし、カバーすべき箇所はカバーしてという
多香子にとって非常に良心的なディレクションが行われてる点があげられます。
(avex移籍以降の作品に足りないのはそこだったのでは?)
結果ダンサブルでありながら音数が少なく、ガラス細工のように繊細な構築美を見せ、
結果それが彼女の「おとなしそうな美人」とか、みたいなキャラクターにも合致した、と。
hiro「Baby don′t cry」に匹敵するトータルでの完成度を誇っています。
ただし、このあたりから既にセールス面では陰りが見え始め、
目に見えての迷走と言える高速トランスナンバー「kiss you 情熱」や、
一方、超保守的なキャッチーミディアム「GLORY-君がいるから-」「Air」などと
多香子がやる意味が蔑ろにされてる憤りは勿論、何にしても音楽的に退屈で
この素材の扱い方というモノにブレが見えるというか、逆手にとった実験的お遊びなのか
なんにしても不快でした。
それは「ブルーライトヨコハマ」のカバーという珍企画で見事にトドメの一撃をかまされてしまった訳です。
唯一の救いは、同じくカバーでありばがら、4つ打ちキラキラビートが効いたハウス歌謡
「Make-up Shadow」(原曲:井上陽水)という名作もこの時期の体たらくと辻褄を合わせるかのように
リリースされた点!
原曲と、トラックのクールさが微妙に融合しきれてない気まずさが、逆に歌謡曲的な色気を醸し出す好カバー。
陽水ファンのうるさ方には評判も悪いですが、原曲が持つドラマティックさが強調されてる点は
評価してあげて欲しいかなぁ。
こうして紆余曲折の末、2007年3月ベストアルバムを持って、事実上ソロでの歌手活動を終了となってしまう訳ですが
それでも2010年現在ラストシングルとなっている「Galaxy Legend/Ladybug」が
意外と丁寧に作られた佳作だったのには、嬉しいばかり!
作曲:葉加瀬太郎、編曲:Jazztronik&葉加瀬!作詞にはベテラン•松井五郎と、非常に金のかかった布陣で挑んだ
一曲目も捨て難いのですが、個人的にはBonnie Pink提供曲「Ladybug」のキュートさに一票!
キュートな世界観と多香子の素朴なボーカルが高相性っ。
こうして、初期の河村隆一〜Bonnieに至まで素晴らしい作家陣に支えられた短くも濃厚な彼女のソロワークス。
今あえて再評価してみる価値、多いにアリでしょ☆
シングル「GLORY-君がいるから-」ジャケット
シングル「Make-up Shadow」ジャケット
アルバム「pupa」ジャケット
補足として、やはりそこは資生堂のミューズ!ミュージックビデオ、ジャケットのアートワークなど
さすがのフォトジェニックぶりを遺憾なく発揮してる点も、ソロ上原多香子の得難い特性でしょう!
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