2010年5月19日水曜日

アイドル評論(16)4minuteコンプレックス



4分間で世界を魅了する “4 minute” 。
韓国発の最新型パワーアイドルが日本のアイドルポップシーンをも活性化っ!
日本の箱庭アイドルたちもウカウカしてられませんよっ!

と、言う訳で、アイドル評論 featuring 4minute!!


この4minute、韓国では2009年にデビューした、全員90年代生まれのガールズ5人によ
ヴォーカル&ダンスグループ。中にはこれまた本国でも大人気だった
Wonder Girls」というユニットに所属していたメンバーも組み込まれていたりします。
まあ、簡単なプロフィールはWIKIをチェックして頂くとして。。

そんな彼女たちが今年5月に上述の、シングル「MUZIK」で華々しく日本デビューを果たしました。

彼女たちの凄さは、このクリップだけで十二分に理解して頂けるでしょうが、
エンターテイメントに置いて外に対してはかなり「開いた」対応を求められるここ日本に置いて
記憶に新しい黒船リアディゾンの襲来と比較するまでもなく、
これはかなりビビるべき事態ではないでしょうか?!

アイドル評論(12)GIRL NEXT DOORコンプレックス」を一読して頂けると話は早いのですが
そもそも、「アイドル」という呼称が忌み嫌われ「歌って踊る」コトそれ自体が
「媚びているようで、ダサイ」=早い話が「自意識がない」みたいで、というような解釈。

それに対して、韓国のポップス市場というのは恐ろしくハイレベルな
ーそもそも歌って踊れるのは必要最低限のスキルで、
プラス、それこそ4分間で自分自身の魅力を見る側に植え付けられるだけの
エンターテイメントスキルが求められ、早い話がJ-POPなんかよりずっと欧米型なソレが絶対不可欠という
非常に「熱い」モノがあるようで、
それは、他国出身のシンガーとしては前代未聞の成功を収めただけでなく
日本の同世代シンガーを多いに焦らせる程の「ホンモノ指向」をアピールした
BoA一人とってみてもわかるでしょう!

ハードなレッスンに裏打ちされたパフォーマンススキルだけでなく
ほぼ完璧に日本語能力を身につけた、そのエリートぶりは今考えてもセンセーショナルだし
いい言葉じゃないケド、そもそも「スペック」が違うと!

SPEEDの解散によって、終わりかけた沖縄アクターズスクール的アティチュードのトレンドも
BoAこそがよりブラッシュアップされた「歌って踊れる」
(外タレではなく、あくまで)「J-POPシンガー」としてこそ
成功したコトが驚愕すべき事実!
彼女が、日本の音楽の閉じた市場に半ば見切りを付け、自らの戦闘能力をアメリカへ試しに行ったのは
必然の流れ!

それでいて、日本人ってどこか「外国人タレント」をわけも無く有り難がる傾向というのがある気がします。
それこそが先に挙げた外に対しての「開いた」対応という、過度な開国意識。
音楽に関して言えば、さらにそこでの「輸入モノ」を強かに取り込んで行くJ-POP市場の貪欲さ。

こういう循環はすっかり根強くシステム化しているように思います。

上述した「現行J-POPシーンに置けるアイドルという概念」が根強い昨今、
日本人なら「アイドルと呼ばれたくないから」出来ないコトが、
「ガイジン」であるというたったそれだけを1クッションとして(一種、ひとつのキャラクターとして)
見るコトで、「こういうモノ」として受け入れる。
そして、「外タレコンプレックス」によって、どこか「有り難い、高尚な」存在として
カリスマが作り上げられるのは、意外と容易い行為なのかもといっては過言?

それは「現行J-POP」と絶妙なズレがあるからこそでもあるのでしょう。
斬新「過ぎない」アプローチが。

。。。というのが、超個人的に思う、日本で成功する外タレの法則なのですが、
そこ行くとこの4minute、それらの法則をほぼ完璧にカヴァーした用意周到なデビューと感じさせます。


勿論、今後チャート上でBoA球の猛威を振るうかは今の所計り知れない訳ですが
それでもこうして、日本の若者〜果ては、「とくダネ」の小倉さんに至るまで
一定の評価をこの時点で得ているのは、すごいコトだし、脅威を感じるべき点。


そんなこの4minuteの躍進に対して、個人的に最も思う所というのが
「日本のアイドルには、どうしてこーゆーのが出来ないの?!」っていう怒りにも似た憤りでした。

この無遠慮なまでに刻み込まれたビートが縦横無尽に飛び交う、
バッキバキ、ゴッリゴリ、キラッキラのハードエッジエレクトロポップひとつとっても
Perfume以後、猫もしゃくしも「それ」的な意匠というのが入り込んで来ているシーンに置いて
「この手の音」が受け入れられているのは重々承知のはず!

それでもどこか保守的なJ-POPシーンにここまでのモノを歌謡曲として響かす
気概もパッションもないのだと思うと、超情けないっ!

さらには、コスチュームやヘアメイク、ミュージックヴィデオのディレクションどれをとっても
「ちょっとだけ新しい」アイドル像を垣間見せます。

誰とは言わないケド、一切のジョークもシニカルも排除した
懐古主義そのものと言えるアイドルミュージックが横行する現在の「閉じた」ヒットチャートのなか
これこそが2010年現在の、現在進行形アイドルポップだというのを見せてくれたのが
まさか、よその国の方だなんて!日本人としてどこか、やるせない思いでいっぱい。。

勿論、どこの国のナニジンが鳴らしてるサウンドだろうと、良いモノは良いし、
それをニッポンのシーンで響かせてくれいるコトには変わりないんでしょうが
これだけ円熟した文化のはずのニッポンのアイドルが、この体たらくじゃぁ。。。人情としてどうしてもね!

願わくば、コレを模倣でもなんでもいいから、
「J-POPでもこれぐらいのレベルはやっちゃって良いんだ」という考えのもと
やっちまってくれるコトを願うバカリ。

中田ヤスタカフォロワー勢も、そろそろ本気で「真新しい」ネクストレベルへ、
高みを目指しても良い頃なのではないでしょうか?

少なくとも新生Dreamは、この4minute現象に対してかなりビビっといた方がいいと思われます。


あと、この妙にガツガツ前に迫る「肉食感」こそ
ロリコン的な心理がうずまく日本の閉じたアイドル市場に置いて、
今最も得難いモノのひとつでしょう。

少なくともそこぐらいは見習っとくべきっ!




2010年5月11日火曜日

アイドル評論(15)Buzyコンプレックス



賢明なるアイドルファンの皆様なら、知ってる方も多いでしょう。
こちら「Buzy」(ビズィー)。
LeadBOYSTYLE、最近ではBRIGHT、清水翔太等を輩出し続ける
由緒正しき養成スクール「キャレス」で鍛え抜かれたダンス、ボーカルも含む
圧倒的な総合的スキルと、独自の世界観のJ-POP〜アイドルダンスポップを武器に
躍進を続けながらも、残念ながら大ブレイクならず、解散してしまった6人組ユニット。

現在は各々別個の形でショービズ界に身を置いてるメンバーもいるようですが
このBuzyというプロジェクトだからこその強度と言うモノを見過ごすコト無く
キチンと記録ではなく記憶にとどめられておくべき逸材だったという事実は
少なくともアイドルミュージックを愛するすべての人の共通認識として置きたい所!

あえて今、このBuzy。再評価して行きたいと思います!


そもそも母体となったのは1999年上述の「DOUBLE OR NOTHING」でデビューした
女の子4人組ユニット「COLOR」でした。
当時としても、このダウナーなダンストラックというアイドル作品としては些か地味なパッケージングであるコトや
当時雨後の筍の如く乱発されたモロSPEEDフォロワーのうちの1組という程度の
認知しかされず、全うな評価を得られない不運に見舞われます。

アイドルをディレクションするノウハウのない「Amuse」だったコトも
関係してるのでしょうが、その点逆に言えば思うようなセールスやブレイクに
繋がらずとも、というかほぼ反比例するが如くに音楽的強度は経歴を重ねるごとに
増して行きます。即切り捨てなかった点も含め
事務所サイドに、いわゆる「アイドルだからこの程度で!」的な勝手な見切りは
微塵もありません。
方や、あえてスキルを絶対的要素としないモーニング一味の全盛の真裏に
身を置かなきゃ行けないタイミングであったコトに対する反動としての
ここでの他では得難いクオリティーは褒め讃えられておくべきではないでしょうか。

この当時の一押しは、元プリプリ奥居香による熱いミディアムバラッド
翼がなくても」や、後のBuzyのクオリティーを大きく支えるコトになる
ポルノ•ハルイチによるリリックが冴える「Rav&Business」、
FLYING KIDS浜崎貴司氏作詞の「あなたを愛す私を愛す」など多数!


しかしその後メンバーの1人、門田こむぎが学業優先のため脱退。
(ちなみに、あのもんたよしのりの娘さんだったりします。)
新メンバーを3名増員し(dream同様、モーニングの後追い的な!)ユニット名義も「Buzy」と改め
再出発を果たします。
ショッピングモールなどでのイベントを地道に周り、
スキルと根性はますます磨かれて行く雑草魂はdreamと双璧を成す所でしょう。
それもひとえに、他社参入を許さない、ハロプロ市場独占時代への反発への悔しさ、苦しさ
スキルがあればなんとかなる世界じゃないのよっ!とわかりつつ、それでもソレをバネに
大活躍してくれる日を夢見ていました。

このBuzyをはじめ、当時のAmuse所属アイドルを十把一絡げにし
「BEE-HIVE」と言うハロプロ的なアイドル集合体を形成し、合同でのコンサートなど
チーム一丸となって、ハロプロ帝国に立ち向かったりもしました。

その中にはこちらも今は亡き「BOYSTYLE」や、何を隠そうあの「Perfume」も
組み込まれていた訳です。Perfumeにも共通するこの、当時の現行アイドルポップシーンとの「絶妙なズレ」こそが
後の音楽的完成度へと直結し、また、たとえば浅はかにモーニング娘。をフォローするような
「居直り」も一切するコトなく、独自の音楽的戦闘能力だけで着実にシーンへとアプローチを仕掛けた、
と言ってもはや何の差し支えもないでしょうよっ!

やはりいつだって音楽的な面白さが、音楽シーンの新たなカウンターとなる。というのは
字面だけで言えば至極真っ当な話ですが、純粋に耳から入ってくる情報だけで
判断してもらえないのがニッポンの音楽業界だというのも事実な訳です。

言ってみれば、2000年代のハロー!プロジェクト全盛期に置いて
乱暴な言い方をすれば「ハロプロじゃなければ、ホンモノじゃない」的な空気が
全然大袈裟じゃなく確実に存在していました。
言わばそんな閉塞感漂うアイドル音楽産業のシステムと戦う戦士なのです!彼女達は。
(そして戦友の「死」を胸に、Perfumeには責任を持って頑張って頂きたい訳でもあります。)

そうして苦難の末、2004年ついに、シングル「鯨」でのメジャーデビューを果たしたのでした!


どうでしょう、もうこのミュージックビデオ1本で、
彼女達の本質はほとんど捉えられるのではないでしょうか?

J-POP以上に超J-POPど真ん中なクオリティー!キャッチーかつドラマティックなメロディー、
ポルノグラフィティ晴一による、幾重にもメタファーを重ねた衒学的で哲学的で、物語性漂うリリック、
ポルノ布陣な、本間昭光氏に寄る端正なアレンジ、全てに置いて一点に集中して行くような
エネルギーを感じるスピード感いっぱいの名曲。

当然忘れちゃいけない、メインボーカルを張る當山奈央のハスキーがかったセクシーなボーカルも絶品!
本間&ハルイチ作品とも高相性。

またダンスのきれ、押さえ込まれてた欲求が一気に爆発したような勢いに満ちています。
あと細かい所ですが、モノトーンでかためた衣装やヘアメイク
そして白黒加工のビデオ自体の仕上がり、どれをとっても「アイドル作品」という
パッケージングにとどまらない着地に感じる、
前述の「勝手な見切りを一切感じさせない」気概をこそ買いたい!

その後も、同じ布陣、同じベクトル、同じクオリティー水準をキープして
マイペースながらリリース攻勢は続きます。


一定の水準で楽曲が毎回ちゃんと飛び出してくるという
「アベレージ」への安心感こそ、このジャンルに置いておおよそ求めにくい点な訳で
この短期間の出来事では合っても、そこを軽々超えたBuzyは偉い!
(そんなのが達成出来たのは、他に黄金期のモーニングや初期松浦、それこそPerfumeぐらいしかっ!)



そして唯一のオリジナルアルバムにして
このジャンル史上BEST10に食い込む名盤アルバム「Buzy」へと続いて行きます。

Buzy 1st ALBUM「Buzy」

COLOR時代のセルフカバーあり、カップリング再録あり、メインボーカル•當山奈央ソロ名義での旧作まで
入れれるもんはすべて入れたようなお手軽そのものなプロダクションでありながら
まるでライヴでの流れを意識しているかのような滑らかなトラックリストの配列の巧さによって
全然聴けちゃう、愛すべきアルバムです。
そして、とにかくアイドルという枠では語り尽くせない
大きな魅力に溢れた愛すべき存在でした。

しかし、このアルバムの発表から半年後2006年6月突如解散となりました。。。
このまま埋もれさせるのは、やるせなさすぎる気持ち
わかって頂けるのではないでしょうか?

きっと長いアイドル史の中では触れられずに通り過ぎられていくのだろうケド、
あなたがこれを聴くなら、聴いたその日からあなたの音楽史には
それなりになくてはならないモノになるハズ、きっと!


アイドル総力特集(2)今あえて再評価!SPEED勢ソロワークス•コンプレックス!(最終回)

SPEED勢各々のソロワークスの中から飛び出した隠れた名作をピックアップしていく
短期集中連載の最終回!今井絵里子&HITOEの数少ない(失礼!)傑作をまとめて評論!

★今井絵里子編


思えば最もSPEEDカラーを踏襲し引き継いだのが絵里子でした。
「Eriko with Crunch」プロジェクトがスタートして以降、
SPEEDのシングルのカップリングとして2曲のソロナンバーを発表していたものの
単独でのシングルで正式ソロデビューしたのがメンバー中最も遅かったのも意外な事実。

そして3rd「in the Name of Love」で「今井絵里子」名義へと。。

どうにもゾンザイに扱われてるような、急場しのぎを感じさせる過渡期的シフトが
当時から疑問に思ったものです。そもそも「with crunch」ってなんだよって言う。
(蛇足ながらcrunchの中には後のAI-SACHIのSACHIKAちゃんも居たりしますが!)
楽曲的にも良く言えば、安定感がありSPEED自体のファンを最も受け入れ易い、
悪く言えば無難で安全パイで、目新しい要素が無い。。
そもそも楽曲的にSPEED時代と変わらなければ、
人数が減ったと言う絵的なマイナスしか強調されないんじゃないでしょうか?

それでも、グループに置ける彼女のスタンスを思うと、コレで良かったのかもと思います。
きちんとしたアイデンティティーを持ちつつも突出した何かを持った個性派な顔ぶれのメンバーの中あえて「普通」を振る舞うというか。
それを思えばSPEEDイズムは絵里ちゃんソロの中で補完されていたと見るコトも出来るし
解散に一番消極的だったのも、復活に一番積極的だったという話も裏付けるし!

彼女以外のメンバーが各々の方向に突き進む中、
SPEEDが培って来たモノを一身に守った姿勢は評価したい。
伊秩作品との相性も一番良い気がするしっ!

そんな中賭けに出たと言っていいのが、4th Single「identity」!


hiro同様に葉山シフトへと進み、過去の幻影に縛られて凡庸になりつつあった
3rdまでのキャッチーな流れも残しつつ、ロック要素を全編にまぶし、当時の現行的要素を配し
言うなれば「今後コレで私は戦って行きます」というような、
他の誰でもない「ソロ今井絵里子」の世界観を構築し始めます。

また当時ルックス的にも格段に色っぽくなり、音楽番組でこのナンバーを披露した際の
ロックファッションも非常に決まっていたと記憶しています!

この後も、再び伊秩ワークに戻った5thを例外として
絵里子のダンスポップにはあくまで尖った要素というのが
申し訳程度に配されているという特徴を全うして行きます。

それは、同時にアクターズスクール的としか言いようの無い、
どこか「ボーイッシュ」で「スポーティー」な爽やかさ、歪さでもあり、
SPEEDの空席を鮮やかに埋めた初期BoAなどにも受け継がれている要素かと思います。

この尖った表情こそが彼女なんだと、ようやくソロに置ける確たる世界観を提示しきったのが
6th singleであり、avex移籍後の第一弾シングルでした。


ほんとに音楽的には無知なため、キチンとした専門用語で語れないのが歯痒いんすが
一聴して誰もが一瞬は戸惑う、ギラギラ、チャキチャキした打ち込み音、
ちょっとアジアンフレーバー?

そして、絵里子のキュートさでカバーしたラップパートの面白さ
キャッチ—なメロディーとセクシーなサウンドが絡み合いウネリ合い、
妙なグルーヴへと昇華されたこのナンバー
兎に角この前衛性、これだけエレクトロ〜テクノポップが市民権を得まくってる現在でもなお
この鮮度が損なわれてない事実はホンモノでしょうっ!当時ネットでも話題になったのも頷ける!
間違いなく彼女のソロ最高傑作!

これ以降も一時まではコンスタントな活動を続けて行った彼女ですが、
彼女もまたベスト盤を持って一応の一区切りを見せました。
それと前後しプライベイトでも、妊娠〜SPEED結婚〜出産〜育児〜SPEED離婚、
と山あり谷ありに駆け抜け、そこでもやはり、SPEEDイズム!?

今現在はグループとしての活動の傍ら、avex内のインディーズレーベルで「elly」名義でCDを発表している様子。
「Don′t stop the music」で提示したアイデンティティーを一切排除した
個人的にはちょっと魅力を感じにくいアコースティック路線もなんだかなぁ。。
まぁ、規模はどうあれ、コアなファンに支えられ幸福な活動を送っていけてるのは間違いなく良きコトでしょう。

ただ、メインボーカルとして中心的役割を担った彼女がこうして今振り返れば
結果一番地味というのは少し切ない話。

そこ行くとHITOE、人気だとかなんだとか言って行けばアレなんでしょうが
方向性のよくわからないアイドルとしては非常に歪んだ個性を放出しボクを筆頭に
熱烈なコアファンを生み出した彼女の、「攻めの地味」はまさに絵里子とは超対照的!

★HITOE編


そもそもSPEEDの音楽的な魅力って、ブラックなサウンドを下敷きにしている
まさに「TLC」「ジャネット」チルドレンと呼ぶべきスタンス、「着せられ」てる訳でなく
そもそも自分たち自身のルーツにそう言ったサウンドがあってっていう意味では安室奈美恵以上の資質。
SPEEDフォロワーたちも、そこも含めて憧れた部分も多分にあるでしょう。

「HITOE′S 57 MOVE」名義でスタートした彼女のソロプロジェクトは
絵里子とは違った意味で、そう言ったベースにあるSPEEDイズムを発展的により進化&深化させたアプローチで
彼女のルックスや趣向(たとえばファッションやヘアメイク、クールなイラストレーションなど)
との食い合わせから逆算し、見事なシンクロ率!
丸みのあるキュートな表情のボーカルとのギャップもここでは「新しいグルーヴ」として機能してる点も
ディレクションの妙に素直に拍手。
伊秩氏のプロジェクト「HIM」のカバー曲である本作「INORI」も完全にHITOEカラーに染め上げちゃってます!

グループ解散後もこの路線でグイグイ突っ走ってくれるコトを願っていたにも関わらず
しかし2002年つつましやかにリリースされたシングル&アルバムまで待たなくてはいけなかったのは
憤りを通り越して激怒のレベル!


シングルカットされた「I Got You」は、「INORI」からまたさらに
発展的により本格指向に寄ったブラックテイスト!
同路線のR&Bシンガーとも戦えそうな個性と強度を誇っています。

ここでひとつ仮説を唱えると、あの時グループが解散していなかったらSPEEDとして
こういう路線に脚を踏み入れる時が確実に来たはずです。

そしてそれはSPEED復活後第2弾シングル「S.P.D.」の方向性へと直結していったのではないでしょうか?


つまる所、本来「こういうコトが出来る素材」が、凡庸なポップスに踏みとどまってて貰っては困るという話。
当然「老若男女、誰もが安心して聴けるキラキラした応援歌」は引き出しの一つとして
SPEEDに絶対に持っていて欲しいパーソナリティーではありますが
そろそろ本格的に「カッコいいSPEED」を打ち出して行って良いはずです。
それこそセールスなんて気にもとめずに!

アメリカの古き良きブラックミュージックを聴いて育ったはずのアクターズ勢が安室ちゃんを覗けば
ただ「歌えて踊れる」だけの存在に甘んじていていいハズもないでしょう。
志半ばで空中分解を余儀なくされた若きフォロワーのためにも、今なおこうして輝いてるSPEEDが
出来るコト、それを全うするコトを大事にして欲しい、と。

hiro、上原多香子、今井絵里子、HITOE′S 57 MOVEのそれぞれがそれぞれの方向性に突き進んで成果をあげてきた
あの頃のモチベーションを、単純に“×4”した本気のパワーを是非、心を込めて期待したい所存!

毒舌で始まり、毒舌で終わる今回の総力特集。
でも愛してるからこそ!期待してるからこその確かなメッセージとして受け取ってもらえたら。

そして、どうかソロ時代にも日の目を浴びれなかったいい作品が眠っているコトを確認していただけたらと願い
SPEED勢ソロワークスコンプレックス、完。

アイドル総力特集(2)今あえて再評価!SPEED勢ソロワークス•コンプレックス!(第二回)


あまりにも名曲多数なhiroと比較するまでもなく、そもそもリリース自体活発じゃなかった他3名。
セールス的にもある時を境に目に見えて低迷期に突入し、試行錯誤の形跡も見えます。

でもだからこそ、あえてリスクを承知で挑んだようなトライアルも散見出来る訳で、
その試みをこそ高く買いつつ、楽曲的にも小粒ながら良作も目白押し、と、トドメの再評価をっ!

★上原多香子編


ダンス兼ヴィジュアル担当と言って差し支えない多香子が、意外にも一番乗りでソロデビューを果たしたのは
皆様も強く記憶にとどめている所でしょう。
当時「RK」名義でプロデューサー•ライターとしても注目され始めていた河村隆一を起用したソロデビュー作は
見事にオリコン首位ゲット!
日本語の発音自体が妙におぼつかない、それでいてピッチも怪しい独自の歌唱法を、
当時「萌え」という言葉こそ無かったものの、的な塩梅に昇華したシンプルで音数少なめなサウンドメイキング
乙女の胸キュン描写に終始した歌詞世界。
それらも相まって、「上原多香子」という素材の扱い方は大方この時点で出来上がり、
それは後々も引きずられつづけるコトになります。

従って、最もSPEED色を感じさせないプロダクション、
彼女独自の世界観という様式美もこの時点ですでに出来上がっていたのでした。


結果的にRKプロデュースラストとなった、本作「SWEET DREAMS」では
シングル3枚、アルバム1枚を通して余りにも定型が凝り固まり過ぎた“上原×河村”の世界で最後に出来るコトをすべて
詰め込んだようなある種の到達感を感じさせています。
初期のイメージをちょっとばかし「オトナのお姉さん」路線にシフトしたようなそれでいて
無機質な世界観、抑えめながら作り込まれたアレンジも含め1個の世界として、非常に秀逸なプロダクション!

またこのシングルには、他に「lonely girl」「クラスメイト」という2曲のカップリングが収められています。
こちらもタイトル曲に負けず劣らずの名作揃い!正直ある時期までA面より好きなくらいでした。


ウィスパーを多用した点も含め、多香子のボーカルのクセを良い方向に転化させているでしょう。
それでいて歌詞の甘酸っぱいニュアンスにもしっくりくる、妙に生々しく艶っぽい印象を受けるのも、sexy。

一方「クラスメイト」は、彼女の「かわいい」声の表情を活かし
想い出を振り返り、懐古し、ちょっと切なくなっちゃうという、センチメンタルな空気感。

3曲全てに置いて、彼女の特異なボーカルをこそ最大限に活かし、カバーすべき箇所はカバーしてという
多香子にとって非常に良心的なディレクションが行われてる点があげられます。
(avex移籍以降の作品に足りないのはそこだったのでは?)
結果ダンサブルでありながら音数が少なく、ガラス細工のように繊細な構築美を見せ、
結果それが彼女の「おとなしそうな美人」とか、みたいなキャラクターにも合致した、と。

hiro「Baby don′t cry」に匹敵するトータルでの完成度を誇っています。

ただし、このあたりから既にセールス面では陰りが見え始め、
目に見えての迷走と言える高速トランスナンバー「kiss you 情熱」や、
一方、超保守的なキャッチーミディアム「GLORY-君がいるから-」「Air」などと
多香子がやる意味が蔑ろにされてる憤りは勿論、何にしても音楽的に退屈で
この素材の扱い方というモノにブレが見えるというか、逆手にとった実験的お遊びなのか
なんにしても不快でした。
それは「ブルーライトヨコハマ」のカバーという珍企画で見事にトドメの一撃をかまされてしまった訳です。

唯一の救いは、同じくカバーでありばがら、4つ打ちキラキラビートが効いたハウス歌謡
「Make-up Shadow」(原曲:井上陽水)という名作もこの時期の体たらくと辻褄を合わせるかのように
リリースされた点!


原曲と、トラックのクールさが微妙に融合しきれてない気まずさが、逆に歌謡曲的な色気を醸し出す好カバー。
陽水ファンのうるさ方には評判も悪いですが、原曲が持つドラマティックさが強調されてる点は
評価してあげて欲しいかなぁ。

こうして紆余曲折の末、2007年3月ベストアルバムを持って、事実上ソロでの歌手活動を終了となってしまう訳ですが
それでも2010年現在ラストシングルとなっている「Galaxy Legend/Ladybug」が
意外と丁寧に作られた佳作だったのには、嬉しいばかり!

作曲:葉加瀬太郎、編曲:Jazztronik&葉加瀬!作詞にはベテラン•松井五郎と、非常に金のかかった布陣で挑んだ
一曲目も捨て難いのですが、個人的にはBonnie Pink提供曲「Ladybug」のキュートさに一票!


キュートな世界観と多香子の素朴なボーカルが高相性っ。

こうして、初期の河村隆一〜Bonnieに至まで素晴らしい作家陣に支えられた短くも濃厚な彼女のソロワークス。
今あえて再評価してみる価値、多いにアリでしょ☆


シングル「GLORY-君がいるから-」ジャケット

シングル「Make-up Shadow」ジャケット

アルバム「pupa」ジャケット

補足として、やはりそこは資生堂のミューズ!ミュージックビデオ、ジャケットのアートワークなど
さすがのフォトジェニックぶりを遺憾なく発揮してる点も、ソロ上原多香子の得難い特性でしょう!